米個人向け年金販売、記録的増加ペースークレジット市場押し上げ - ブルームバーグ

生命保険会社による個人向け年金商品の販売が記録的なペースで拡大しており、社債や商業用不動産担保証券（ＣＭＢＳ）の需要押し上げにつながっている。

　　生保業界団体のリムラによると、2023年の個人向け年金の販売額は前年比23％増の 3850億ドル（約57兆5800億円）と、過去最高に達した。金利上昇が年間支払い予定額の増加に寄与する可能性があることから、年金商品の魅力が増す格好となった。

　　その裏では、年金の販売窓口となっている生保がインカムを得るために債券の購入を進めており、特に社債や住宅ローン債券を含む資産担保証券を買い増している。今年は利回りの低下を背景に需要がやや衰える可能性があるものの、リムラは年金販売が歴史的な水準で好調を維持すると見込んでいる。

　　生保による債券買いは、今や多くの債券需要が人口動態に左右されている構図を浮き彫りにすると同時に、米金融当局が比較的引き締め方向の政策を維持しても、社債が高いバリュエーションを維持できる理由を裏付けている。

　　 アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は、「足元のクレジット需要の主な原動力は、より高いオールイン利回りを模索するリテールおよび年金勢となっており、ベビーブーマー世代の引退増加に加え、金利の上昇に伴う年金加入者への毎月の支払い増加を背景とした年金の販売拡大も寄与している」と指摘した。

Demand for Annuities Is Soaring

A record $385 billion were sold in 2023

Source: LIMRA

　　ドイツ銀行のストラテジスト、エド・リアドン氏によると、年金で調達した資金は投資適格級社債に向かう傾向があり、通常は固定金利で年限は３年から10年と、年金のデュレーションとほぼ同じ期間になっている。

　　投資適格債については、年金やそのほかの退職者向けに運用している投資家からの需要が高いバリュエーションの維持に寄与している。

　　格付けが「ＢＢＢー」以上の社債の米国債利回りに対する平均リスクプレミアム（スプレッド）は、95ベーシスポイント（ｂｐ、１ｂｐ＝0.01％）と、過去２年間の最低水準付近まで縮小。ブルームバーグの指数データによると、過去20年間では平均スプレッドが149ｂｐとなっている。

　　年金への記録的な資金流入は、生保によるＣＭＢＳ需要の強力な押し上げにもつながっていると、リアドン氏は６日付のリポートで指摘。24年は「ＡＡＡ」格付けのＣＭＢＳの超過リターンは投資適格およびハイイールドの社債を上回るという。

　　ブルームバーグのデータによると、ＡＡＡ格ＣＭＢＳのスプレッドは９日時点で88ｂｐと、昨年10月の高水準から約30ｂｐ縮小している。

　　リムラの 推計では、今後２年間の年金販売額は総額6930億ドルに達する可能性がある。今年の販売額は最大3310億ドルと、昨年からは減少するものの、22年当時の過去最高水準に近い規模は維持されるという。

Retirement Has Increased Sharply Over Last Decade

Share of civilian non-institutional population (16 & older) that's retired

Source: Federal Reserve Bank of St. Louis

　　米金融当局が年内に利下げに踏み切った場合も、債券の利回り低下に伴う価格上昇を背景に社債には支援材料になるだろう。

　　サンタンデールＵＳキャピタル・マーケッツの投資戦略責任者スティーブン・エーブラハムズ氏はリポートで、「クレジットは20年半ば以降、一貫して債券の他のセクターをアウトパフォームしており、年金販売の急増が一因になっていることはほぼ間違いない」と分析。「これは今後のクレジットのパフォーマンスにとってポジティブ要因になる」とみている。

原題： A $700 Billion Product Is Powering US Credit Market Rally (1)（抜粋）

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February 13, 2024 at 12:41PM
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