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消費するだけで推しの応援ができる次世代クレジットカード「ナッジ」とは?| - @DIME

新連載/利他ビジネスの深層

他者に貢献する体験を価値として提供しながら、経済的な持続性もある「利他ビジネス」。寄付や環境配慮とは異なる新しいビジネスを特集する。

今回は、ナッジ社が2021年にスタートした次世代型クレジットカード「ナッジ」の利他ビジネスを掘り下げる。

1枚から提携クレカを発行! 「ナッジ」の利他ビジネスとは?

ナッジの特徴は、多様な提携クレジットカードをうみだす仕組みだ。一般的に、提携カードは、クレジットカード会社(発行元)と提携する外部団体(提携先)を通して発行されるカードで、主に金融機関や大手航空会社、大手百貨店などが提携先となっている。プロパーカード(クレジットカード会社が直接発行するカード)にはない独自の特典(ポイントが有利、マイルがたまる、商品の割引など)を提供する。

これまでの提携カードは、最低でも数万枚の発行が前提とされていた。ナッジはなんと初期費用なしで1枚から提携カードを発行できる仕組みを構築した。これにより、あらゆる企業や団体、あるいは個人でも自分の提携カードをつくれるようになった。

ナッジの提携先(同社は「クラブ」と呼ぶ)には、アーティストやスポーツチーム、大学の運動部、NPOなどが並ぶ。クラブには決済手数料の一部が還元されるため、ユーザーはカードを使って消費するだけで、自然と「利他」体験ができる。

従来型の提携カードと比べるとナッジの個別のクラブは人数こそ少ないかもしれないが、ユーザーとの深く強い関係を持っている。百貨店でカードをつくる気にならなくても、好きなアイドルが勧めるカードならほしい、という人は多いはずだ。

「推しを応援できる」が、ナッジの提供する価値だ。独自の特典は従来型クレジットカードのようなポイントではなく、オリジナル写真やメッセージ動画など、体験型のもの。ユーザーの財布が痛むわけはなく、むしろユーザーは自分の「好き」なスポーツチームやアーティストの限定コンテンツを楽しむことができる。

発行元のナッジからみれば、提携先のクラブはカードの新規発行を促してくれるセールスマンと言える。これまで、クレジットカードを利用してこなかった層に、別の角度からアプローチできるメリットは大きい。経済的な持続性も高い仕組みは、よくできた利他ビジネスだ。

多様性に着目した新しい金融体験

同社のミッションは「ひとりひとりのアクションで未来の金融体験を創る」。クレジットカードのナッジは、キャッシュレス化の推進、特に若い世代をターゲットとした取り組みとしてスタートした。はじめから利他ビジネスを志向していたわけではなく、ビジネスの課題解決の手段として「他者への貢献」を選択した点が興味深い。

合理的に考えれば、ユーザーは現金よりキャッシュレス決済を利用したほうが、経済的にも得だ。数%のポイントが還元されるし、割引などのような特典も受けられる。かつては使える場所が限られていたが、ここ数年で状況は代わり、一気にQRコード決済やクレジットカードに対応する店舗が増えた。

それなのに、日本のキャッシュレス決済の普及率は諸外国と比べて遅れたままだ。過去に行われたアンケート調査では次のような理由が上げられている。

参考:https://www.navinavi-hoken.com/articles/cashless-or-cash

「いずれもはっきりした理由ではない。使わない理由というより、今までの習慣や行動を変えるほどの強い動機がないのではないか」という沖田貴史氏。「これまでの金融の考え方が、合理性や経済的メリットに偏りすぎていた」と指摘する。

行動経済学で示されている通り、人間は必ずしも合理的な判断をするとは限らない。金融業界では理解されてこなかったが、キャッシュレス決済においては、むしろ非合理的なユーザーが多数派なのだ。

では、キャッシュレス決済において、新たな価値を提供するにはどうすればよいか? 沖田さんらは当初、若者ターゲットに従来と比べて圧倒的に使いやすく、加入しやすいこと、そして「スタイリッシュ」なカードを目指した。

前者はスマホアプリとの連動や、申込時の記入項目のスリム化など、現在のサービスに生かされている。後者はナッジのカード券面のデザインを工夫するなど見た目の問題だが、途中でビジネスモデルの方針転換があったという。

「40代の私は、20〜30代の若者とひとくくりにしていたが、本当はもっと多様なはず(沖田氏)」。多様性をキーにサービス設計を練り直した時、浮かんできたのが、さまざまな「ファン」と「推し」の関係だった。

行動経済学の考え方がサービスに

「巨人 大鵬 卵焼き」と言われたのは昭和の時代。国民の多くが、ひとにぎりのスポーツ選手(チーム)やアーティストを応援する時代はとうに終わった。昨今の「推し文化」では、応援の対象は細分化し、代わりにコミュニティのつながりは深まっているのだ。

場合によって、ファンは推しのために金銭的な消費、あるいは浪費を惜しまない。しかし、それでは経済的な持続性に欠け、真の意味で利他ビジネスとは言えない。

ポイントは、自分の経済的なデメリットがなく、推しにメリットがある仕組みの構築だ。ナッジでは通常の決済手数料のなかから、一部が提携先であるクラブに還元される。

2021年9月のサービスローンチ時に、15件だったクラブ(提携先)は現在40強になっている(2022年3月15日現在)。前述のとおり1枚から提携できる仕組みなので、大規模なコミュニティを持たないスポーツチームやアーティストでも、熱心なファンがいれば自分のクラブをつくることができる。

#クラブ一覧

https://nudge.cards/club

社名、サービス名にもなっているナッジの原義は「肘で軽くつついて促す」といった意味。行動経済学で多用され、「社会や自分にとって、よい選択をするように「そっと後押しする」ことを意味する。

「他者に奉仕、貢献する人を育てたいわけではなく、やりたいことをしていたら誰かの役に立っているようなサービスを作りたい」という沖田氏の言葉は、利他ビジネスの本質をついている。人の善意がなければ成り立たないが、依存し過ぎず、自然と継続される仕組みがなければ、おそらく本当の利他は実現しない。

直接的な社会貢献も多様な価値のひとつ

最後に、ソーシャルグッドな領域への広がりにも触れておきたい。

遺児を支援する「あしなが育英会」、猫の殺処分ゼロを目指し活動する「ネコリパブリック」などがクラブとして参加。また、トンガ沖で火山噴火が起こった際は、ナッジ自身が利用金額の一部を寄付するクラブを立ち上げた(「トンガ沖火山噴火支援」クラブ)。

この領域を推進するのは同社の大塚和慶氏。「ソーシャルグッドな活動への貢献も多様な価値のひとつ。構想にはあったが、大塚さんが取り組みを加速させた(沖田氏)」。

金融庁出身で、2021年7月までは英国に出向していたという大塚氏。

「縁あってナッジにジョインしたとき、次世代型クレジットカードの仕組みと相性が良いと考えたのがソーシャルグッドだった。英国はパブリックマインドが高いとされるが、日本人も寄付などの習慣がないだけで社会への帰属意識は高い(大塚氏)」。

日本でも、ソーシャルグッドな取り組みは広がっていく可能性がある。アイドルやスポーツチームを応援するのと同様に、地球環境を改善したり、困っている人を支援することも多様な価値のひとつになる。

ただし、「押し付けるのではなく、その人自身が好きなことをして、結果的に社会貢献になればよい(沖田氏)」と強調されるように、「そっと肘で促す」スタンスは崩さない。新しい金融体験によって、従来できなかったこと、やりにくかったことを、滑らかにしていくのが、同社の利他ビジネスだ。

ナッジ

取材・文/ソルバ!
人や企業の課題解決ストーリーを図解、インフォグラフィックで、わかりやすく伝えるプロジェクト。ビジネスの大小に関わらず、仕事脳を刺激するビジネスアイデアをお届けします。 
https://solver-story.com/

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April 18, 2022 at 04:12PM
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