荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第798回
2023年01月11日 12時00分更新
広島県福山市。瀬戸内海沿いにある小さな漁港。年末年始は漁が休みなので、とても閑散としている。もっとも、ここ数年漁師の数が減り、昔のような賑わいはなくなったとは地元の方の弁である。
以前から、その漁港に猫がいることは知ってたのでカメラを持って散歩してみると、入り口でキジトラのハチワレを発見。猫目線で撮ろうとしゃがんでカメラを構えると、こっちに寄ってくるではないか。
急いでカメラの設定を“動き回る猫用”に変更。具体的には、猫検出AFをオンにして、AFをコンティニアスAFにするだけなんだけど、この2つの設定だけで歩いてくる猫の顔にピシッとピントが合うのはすごくうれしい。まだまだ改善の余地はあるとはいえ、いい時代である。
足元に来たので撫でようとすると、それは嫌だという。微妙な距離感が猫っぽい。じゃあしょうがないねと立ち上がると、この猫も奥へとことこと歩いて行くのである。誘われたらしょうがないと後を追うと、白地に黒い毛が混じった子猫が待っていたのだった。
そして、次の瞬間には、2匹が古い木のテーブルの上にぴょこん(冒頭写真)。どちらも小柄でまだ若いので、大人の猫はいないのかなと話してたら、貫禄のハチワレ登場。あまりに貫禄があるので、その場で「ボス」と名づけられたのであった。
そして、しまいにはこんなことに。
全部で5匹。漁港には海産物を仕分けするなど作業をするテントのような場所が用意されていて、その一角に集まってきたのだ。
どうもここは近所の人が餌をあげる場所のようで、缶詰が無造作に置いてあった。我々がやってきたので、餌をもらえると思って集まってきたのだろう。漁港に住みついてる猫でも、いつも新鮮な魚を食べてるわけじゃないのだ。
翌朝、散歩がてら漁港の様子を見に行くと、そこは猫たちの日なたぼっこ大会。寒い冬の朝、日差しが当たる暖かい場所を求めて、それぞれがくつろいでいて、なんともほわんとするのだ。
まずは、海の近くにいたキジトラのハチワレ。港っぽい背景で撮りたくて、ロープや浮桟橋を背景に入れてねらってみた。朝の逆光猫である。
続いて、巨大な白いスチロール製のアイテム(海に浮かべて漁で使う何かだと思う。調べたら「発泡フロート」というようだ)の前で暖を取る3匹。ここは確かに暖かそうだ。
漁港編の最後は、海を向いて祠(ほこら)がある胡(えびす)神社。えびす様といえば商売繁盛で有名だが、もともとは漁民の間で信仰されていた「異郷から訪れて漁をもたらす神」だそうで、海の近くにある小さな神社は、たいてい胡神社だった。ここも、漁師たちの守り神なのだろう。その祠がちょうど東を向いていて朝日が当たるため、猫がくつろぐのにいいスポットなのだ。
日差しを浴びてまったりしてる猫たちを愛でてると、心身ともにのほほんとしてきて気持ちいいもんです。
かくして、正月の漁がお休みの瀬戸内の小さな(でも、猫たちにとっては十分すぎる広さの)漁港は、地元の人が時折、釣りに来たり散歩に来たりするだけなので、猫たちの天下なのだった。
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